肌にも細菌がいるのをご存知でしょうか? そもそも生物と細菌などの微生物は切っても切れない関係です。人には500兆~1,000兆個、500~1,000種類の細菌が全身にわたって住みついていると言われています。
細菌の種類などは場所によって違いますが、一人ひとりの体内で細菌叢(菌の集合体のようなもの)を作り、全身をコントロールしています。細菌叢は顕微鏡で覗くと、お花畑のように見えることからフローラと呼ばれています。
肌の上に常に存在する菌は、皮膚常在菌と呼ばれます。健康を維持する菌と、増えすぎると肌の健康を阻害する菌があります。どのような細菌がいて、何のためにいるのかを確認していきましょう。
ヒトは生まれてすぐに母親や置かれた環境から菌をもらうため、人それぞれ菌の種類・割合は変わり、全く同じ人はいないと言われています。
また、5歳までに菌の種類は決まると言われていて、加齢や生活習慣によって菌の量は変化します。
肌に存在する菌を総称して「皮膚常在菌」といいます。およそ1兆匹以上の菌が人の肌に存在するといわれています。その中で菌は3種類に分けられます。
皮膚の表面や毛穴に存在し、肌をキレイに保つ細菌を「善玉菌」と呼びます。代表的な菌である表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)は、汗(アルカリ性)や皮脂を分解して、グリセリンや脂肪酸を作ります。脂肪酸は肌を弱酸性に保ち抗菌ペプチドの産生を促すことで、悪玉菌である黄色ブドウ球菌の増殖が妨げます。グリセリンには保湿作用があり、皮膚のバリア機能を保つ役割を担います。
肌環境によって善玉菌にも悪玉菌にも変わる菌を「日和見菌」と呼びます。毛穴の中に存在するアクネ桿菌(Propionibacterium acnes)がその代表例で、最近の研究では悪玉アクネ菌と、善玉アクネ菌があることが報告されました。この菌は嫌気性菌(酸素がある環境ではほとんど増殖できない)で、毛穴や皮脂腺に存在して皮脂を分解し、プロピオン酸や脂肪酸を作り出すため皮膚表面が弱酸性に保たれます。そうすることで、皮膚に付着する病原性の強い細菌の増殖を抑えます。ニキビの原因とよく悪者にされますが、過剰に増殖しなければニキビの原因になりません。皮脂の分泌量が増えたり、何かの異常で毛穴がふさがれたりすると、アクネ桿菌が過剰に増殖し炎症を起こしニキビの原因になります。
肌に悪影響を及ぼす菌を「悪玉菌」と呼びます。皮膚常在菌の中では比較的病原性が高い黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)がその代表例で、少数存在するだけでは問題ありませんが、皮膚が乾燥などによりアルカリ性に傾くと増殖して炎症を起こします。アトピー性皮膚炎の患者さんの肌ではこの黄色ブドウ球菌が多いことが報告されています。
皮膚常在菌は、そのバランスが崩れると皮膚トラブルの原因となります。そのため「バランスを保つこと」と「表皮ブドウ球菌の数を保つこと」が大切です。
皮膚常在菌や、肌の健康を維持するためには、食生活のバランスが欠かせません。理由は、腸内環境が肌の環境と密接に関係しているからです。人間の腸内にも腸内細菌がいることはご存じの方も多いでしょう。
腸内も肌と同様に、主に3種類の菌に分類され、およそ100兆の細菌が住んでいます。偏食や、食物繊維やビタミン不足により便秘や下痢などを起こすのは、善玉菌より悪玉菌が優勢となった状態です。悪玉菌が発生させた有害物質は、血流にのって肌細胞の新陳代謝に影響を与えます。
腸内環境の悪化は、フェノール類という腸内細菌がつくりだす有害物質で判断します。フェノールは新陳代謝を乱し、肌荒れの原因になると言われています。
また、ストレスやホルモンバランスも乱れも肌の常在菌のバランスを崩します。
善玉菌は角質層という肌の表面に存在するため、角質を落とし過ぎると減ってしまいます。角質層にダメージを与える例としては、長時間の入浴、肌の洗いすぎ、洗浄力の強い化粧品・紫外線・防腐剤やアルコール、殺菌成分寮の多い化粧品・レーザー治療などが挙げられます。
過剰に洗浄しないことは、アルカリ性を好む病原性の悪玉菌や真菌などの繁殖が防げ、善玉菌を減らさず、皮膚のバリア機能を保つ意味でとても重要です。乾燥すると善玉菌が住みにくく皮膚はアルカリ性に傾いてしまいます。ニキビができた時も、過剰に洗浄せず、十分な保湿を心がけましょう。
腸内細菌も同様に、加齢とともに肌の善玉菌が減少し、悪玉菌が増えるということが報告されています。腸内細菌だと、母乳で育った赤ちゃんは約90%がビフィズス菌ですが離乳食を境に細菌が増え、 ビフィズス菌の数は一歳の時点で半減し、成人では10~20%にまで減少します。悪玉菌は逆に増加します。肌も腸内と同じ現象が起こります。老化とともに、意識的に善玉菌を肌にも腸にも届けることが必要となります。
上述のように、腸内フローラのバランスを整えるには、よくビフィズス菌などの乳酸菌などが入った食品を食べることが良いですが、肌にも直接乳酸菌を届けるという発想も最近では提案されています。
乳酸菌EC-12 株は、ベビー用品のコンビが選抜した乳酸菌で、赤ちゃん用のスキンケアなどの研究とともに開発されました。菌体そのものが腸内の免疫細胞に働きかけることにより、腸内環境を整える乳酸菌です。
この「EC-12 株」を化粧品向けに製法も新たに開発した新しい乳酸菌100%の化粧品成分が今注目されています。化粧品用乳酸菌EC-12株を肌に塗ることで、善玉菌である表皮ブドウ球菌の量や、表皮ブドウ球菌が作りだす肌の保湿因子であるグリセリンの量が増えたという治験データもあります。
肌フローラのバランスが崩れると、肌のトラブルが増えます。元々肌トラブルやアトピー性皮膚炎、ニキビに悩む方は、善玉菌である表皮ブドウ球菌の量が少なくなり、悪玉菌が優勢になったり、アクネ菌が増殖したりしています。乳酸菌の成分を肌に直接塗ることで、表皮ブドウ球菌の多様性や量を増やし、肌トラブル改善に導くことができます。
体の臭いの原因は、汗に含まれる皮脂やタンパク質を分解する細菌です。良い体臭を出す細菌は、善玉菌である表皮ブドウ球菌で、酸性の肌を好みます。逆に悪い体臭を出す細菌は悪玉菌である黄色ブドウ球菌、ジフテロイド菌、真菌(カビ)で、アルカリ性の肌を好みます。嫌な匂いを放つ体臭も、洗いすぎや肌の乾燥によって、善玉菌が少なくなり、悪玉菌が増えることで起こっています。また加齢とともに発する「加齢臭」も、善玉菌の減少が著しいと発生します。
悪い体臭がある足や脇の下などにも、化粧品用乳酸菌EC-12 株を塗ると、体臭を抑えることが報告されています
注意すべき点として、食品として販売されている乳酸菌(ヨーグルトなど)を直接肌に塗ることは避けましょう。化粧品成分として開発された乳酸菌は、アレルギー反応や肌に悪影響を与えないか、事前に安全性テストがされていますが、食品はあくまでも食べるためのものなので、肌に塗るとトラブルを起こす可能性もあります。自己判断で食品を肌に塗り、トラブルや炎症が起こったとしても、メーカー側の保証は難しいため、注意が必要です。
スキンケアで最も大切なことは保湿です。保湿力がある肌は健康で美しい肌です。その保湿を維持するために、肌の常在菌を無視することはできません。エイジングケアも同様に、今後の美肌づくりのためにも「肌の育菌」をスキンケアの一つに取り入れましょう。まずは洗いすぎや、肌の角質層を刺激しすぎるケアは控えましょう。そして、化粧品用乳酸菌EC-12 株が入った化粧品も使ってみましょう。
フランスで美容とコスメの国家資格を取得。ゲランや日系商社に勤め化粧品マーケティングやビジネススキルを磨き、スパ・elieoZenを原宿にOPEN。ストレスを取りメンタルに作用し、顔立ちを若々しくする独自施術・The 光明フェイスデザインが人気。