PM2.5(大気汚染)が健康や美容に及ぼす影響

都心に住んでいる人が空気の澄んだ土地に行くと、空気の違いを感じることがあります。実は世界人口の約90%が、汚染された大気の下で暮らしていると言われています(世界保健機関(WHO)の2018年5月2日の発表)。気づかないうちに地球上の大気は汚染されている傾向にあります。大気汚染について知識を得て、どのように空気をきれいに保ち、汚染から健康を守れるのかをまとめます。

PM2.5(大気汚染)とは?

smoking chimney

PM2.5とは?

PM2.5とは、大気中に浮遊する微小な粒子です。PMとはparticulate matterの略で、日本語では粒子状物質と訳します。PM2.5というのは直径が概ね2.5μm(マイクロメートル)(1μm=1mmの千分の1)以下の超微小粒子です。工場や自動車、船舶、航空機などから排出されたばい煙や粉じん、煙草の煙などで、その成分には炭素成分、硝酸塩、硫酸塩、アンモニウム塩のほか、ケイ素、ナトリウム、アルミニウムといった無機元素などが含まれ、大気汚染の原因の一つです。

参照:日本医師会・健康の森「気になるコトバ PM2.5」

大気汚染とは?

大気汚染(たいきおせん)とは、人間の経済的・社会的な活動が主な原因で、大気中の微粒子や有害な気体成分が増加して、人の健康や環境に悪影響をもたらすことです。

この汚染物質には、以下のようなものが含まれます。

・二酸化炭素(CO2
ボイラーや自動車から排出されます。

・粒子状物質(PM)
工場のばい煙や自動車の排ガスの人為的な原因の他、火山や森林火災などといった自然による原因により発生します。

・光化学オキシダント
車や工場から排出された、窒素酸化物や炭化水素類などの大気汚染物質が、太陽の紫外線により化学変化を起こすことで発生します。

・一酸化炭素
石炭や石油が燃焼したときに発生する二酸化硫黄、石油の不完全燃焼により発生します。

・VOC、硫黄酸化物、窒素酸化物
工場、施設、自動車などから排出された時点ではガス状ですが、大気中での光化学反応などにより粒子化するものです。ほかにも火山などから排出される硫黄酸化物など自然界から発生するものもあります。

どの国でどのくらい大気汚染が発生しているのか?

WHO(世界保健機関)が2018年に発表した統計 では、世界各国都市部のPM2.5年間平均濃度が掲載されています。それによると、都市部のPM2.5年間平均濃度が最も高い国はネパールで99.5μg/m3でした。逆に最もPM2.5濃度が低いのがニュージーランドとブルネイで5.8μg/m3でした。大気汚染が深刻な中国は51.0μg/m3で15位、日本のPM2.5濃度は11.8μg/m3の159位でした。
インドでは約14の都市部で大気の汚染がすすんでいます。途上国で大気汚染が進んでいる原因は、人口の急激な増加や、化石燃料,特に大規模な石炭燃焼に依存した急速な工業化を進めているためであると言われています。

日本で発生する大気汚染にも、アジア大陸からくる越境汚染が含まれます。

出典:WHO「WORLD HEALTH STATISTICS 2018」

大気汚染を減らすために日々の生活でできること

電気自動車の充電スタンド

人ごとではなく、自分たちの暮らしの中で大気汚染は発生しています

・自然発生源:火山の噴火などにより排出されます。
・固定発生源:工場や事業所から排出されます。
・移動発生源:自動車の排気ガスなど、人間が生活するうえで発生します。

自動車や、家庭から排出されるゴミ、煙草の煙、VOCを含む製品を使用することで、日々の生活の中でも、我々は毎日大気汚染物質を排出しています。

生活の中で減らすためにできることは?

電気、ガス、水道などのライフラインの使用頻度を見直したり、自動車の使用回数を見直すことから始められます。
• 外出する時や日中は照明のスイッチを切る
• 電球をLEDに交換する
• 電化製品の手入れをこまめに行い、効率よくしておく
• 使っていない電化製品のスイッチは必ず切る
• 洗い物をする時や洗面の時に水を出しっぱなしにしない
• ゴミの分別をしっかり行い、資源ゴミはリサイクルに出す
• 冷蔵庫やオーブンの開閉の回数を減らす
• 洗濯物、洗い物はできるだけまとめる
• 移動する際は、自家用車ではなく公共交通機関を利用する
• 輸送車の移動を減らすため、できる限り地元の食材を購入する
• エアコンや給湯器の温度をマメに調整する
• 料理の際は、コンロの余熱とレンジを上手に利用する
• タバコを止める。換気のいき届いた場所で吸い、他人へ煙が届かない配慮をする

VOCを含む製品をなるべく使用しないことも、大気汚染を防ぐことに繋がります。

・エアゾールを含むスプレーの製品(整髪料、制汗剤、殺虫剤など)を使用しない。
「圧縮ガス」を使用した製品を使い「液化ガス」を使用した製品を使用しない。
・非VOC塗料や、非トルエン・キシレン塗料を使用する。水性塗料を使用する。
・水性接着剤を使用する。
・4VOC 基準適合製品と表示のある製品を使用する。
トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレンの 4 物質を意図的に使用せず、 含有量が規定値(トルエン※、キシレン、エチルベンゼンは 0.1 重量%未満、スチレンは 0.015 重量%未満)を満たす製品です。

PM2.5(大気汚染)が健康や美容に及ぼす影響

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人の健康に及ぼす影響

PM2.5は超微粒子のため、肺の奥深くにまで入り込みやすく、喘息や気管支炎など、呼吸器系疾患や循環器系疾患などにかかる危険性が上がります。特に呼吸器系や循環器系の病気を持つ人、お年寄りや子どもなどは影響を受けやすいです。

PM2.5はWHOの研究機関(IARC)よりタバコの煙と同レベルの発ガン性があると発表されています。肺の奥まで侵入し、血管へ入ると体の仕組みに関与して炎症を起こすきっかけになります。

また、他にも大気汚染が原因の一つとして考えられているCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の死者数は増加傾向にあると言われています。全世界で年間320万人が死亡しているとの報告もあります。

参照:CareNet.com「世界で年間360万人が喘息とCOPDで死亡」

大気汚染物質広域監視システム「そらまめ君」の活用も

PM2.5をはじめ、二酸化硫黄(SO2)や浮遊粒子状物質(SPM)などの大気汚染物質濃度の速報値が公開されています。こちらから大気汚染の状況を見て、マスクを使用したり、長時間の外出を控えたりするなど、対策を取りましょう。身体に付着したPM2.5は、帰宅後すぐに除去しましょう。

肌や髪に及ぼす影響

PM2.5は花粉よりも小さい微粒子のため、肌の内部に侵入したり、髪や頭皮に付着したりしやすいです。化学物質のため、肌や髪へもアレルギー反応や汚れの原因になります。特に肌の乾燥が進んでいる方や、アトピー、アレルギースキンの方、敏感肌の方は肌のバリア機能が低下し、安定した肌に比べて角層の水分量や油分のバランスが乱れている状態です。空気中のPM2.5が肌へのダメージを与え、外からの刺激を受けやすくなってしまいます。

中国から黄砂とともにPM2.5が日本に届きます。4〜5月の季節の変わり目にピークになるので、花粉とともにPM2.5が肌や髪に付着し、アレルギー反応を起こすことが増えます。
肌がむずがゆい、赤みやかぶれを起こすという場合は、すぐに以下のような対策をしましょう。

・バリア機能を補強するため、グリセリンなどの肌保護力の高い保湿剤をつける。
・PM2.5や花粉を落とすために洗浄をするが、肌の保湿因子を落としすぎないよう、ジェルタイプやミルクタイプなどのマイルドな洗浄剤を使う。
・油性成分の多いメイクやファンデーションを控える(油に付着し酸化を招きます)。
・大気汚染やアレルギーに強くなる肌に導く成分を配合したスキンケアを使う。

オウゴンエキスが、大気汚染物質(PM2.5)に効果がある?!

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オウゴンエキスは、オウゴン(黄金花、コガネバナ)から抽出される化粧品成分です。
抗炎症作用があり、PM2.5などの環境ストレスや大気汚染に負けない、肌のバリア機能を高める成分です。

PM2.5による炎症関連遺伝子発現抑制

表皮角化細胞に大気有害物質PM2.5を添加し、上清中の炎症因子量を測定すると、PM2.5が皮膚において炎症を引き起こす因子・インターロイキン6(IL-6)※1、インターロイキン8(IL-8)※2の発現を促進することが確認できます。同時にオウゴンエキスを添加すると、PM2.5により増加した炎症因子IL-6とIL-8の発現が低下しました(下図)。

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以上の結果より、オウゴンエキスにはPM2.5による皮膚の炎症誘導を抑制し、肌の老化を防ぐ効果が期待されます。

※1)インターロイキン6(IL-6):炎症時に産生され、種々の炎症性物質の産生を誘導します。アトピー性皮膚炎患者の血中に多く存在すると報告されています。
※2)インターロイキン8(IL-8):酸化ストレスで増加し、炎症に関連する細胞を誘引・刺激することで炎症を拡大する働きがあります。

日々の意識で大気汚染を減らし、対策をしましょう

 

東京風景

さまざまな原因により地球の大気は汚染をされていて、PM2.5もその原因の一つです。また、私たち一人ひとりの生活からも、大気を汚染する物質を排出しています。健康や美容に直結する問題のため、環境への配慮をすぐにでも始めた方がよいでしょう。

PM2.5や大気汚染の影響で、呼吸器系の疾患やアレルギー、肌のトラブルがある方が増えています。大気汚染の情報を収集して、いち早く対策を取ることをおすすめします。昨今では肌のバリア機能や免疫力を高める成分開発も進んでいます。オウゴンエキスなどの成分を含むスキンケアの使用も検討してみましょう。

エリーのりこ

この記事の専門家

美容専門家/フランス国家資格セラピストエリーのりこ

フランスで美容とコスメの国家資格を取得。ゲランや日系商社に勤め化粧品マーケティングやビジネススキルを磨き、スパ・elieoZenを原宿にOPEN。ストレスを取りメンタルに作用し、顔立ちを若々しくする独自施術・The 光明フェイスデザインが人気。